観測の問題点
ワンマン測量の基本、はミラーマンが機械側の操作も行いながら観測を
進めていくということである。ここで気になるのは観測に要する時間である。
コントローラーとミラー(時にはミラー用の三脚も)を持ち、メモ用の図面も
携帯して観測を行うことは、はっきり言って楽ではない。まずその装備が
重くなることが辛いし、手がふさがってしまう。その出で立ちも不格好と
いわざるを得ない。
そして肝心の観測時間は、やはり遅いというべきであろう。実はミラーを
見つけた(望遠鏡の視野の中に入れた)後の動作、視準し距離を記録する
時間は人間よりも圧倒的に早いのである。人がミラーを捉え中心を合わせる
ために慎重に微調整を行う間に、機械はその中心を一瞬で捉え、アッという
間に観測を終了する。時間にして2〜3秒といったところか。これにはいくら
機械に慣れた人でもまずかなわないであろう。
しかし、ミラーを見つけるまでの時間が遅い。人間がミラーの方向に機械
を回転させるのに大した時間はかからないが、ワンマンシステムでは、ミラー
のある方向に機械をリモートコントロールで向かせる必要がある。離れた位
置から機械を自分の方にある程度正確に向かせるのは意外と難しく、機械の
視野の中にミラーを入れるとなるとこれは至難の業となる。機械の自動視準
は視野の中にミラーがあればすぐに観測できるが、ミラーが見つからないと
ミラーを探して例の不気味な探索動作を始めるのである。この時、運良くすぐ
にミラーが見つかればよいのだが、全く見当違いの方向を向いてしまってい
る場合にはひたすら探索作動を行うばかりで、この時間が結構かかってしま
うのである。
また、機械と人間との距離が離れすぎるとこの問題はより大きくなる。と
いうのは、人間から機械を見たとき、機械がどの方向を向いているのかが距
離が離れれば離れるほどわかりづらくなるのである。100mも離れれば、
機械がまるで正反対を向いていてもそれがわからなくなる。機械の方向確認
の為に小さな望遠鏡を携帯しなければならない、なんてかなり野暮。
ミラーの正確な位置を視準するのは得意だが、大体の位置を見つけること
が苦手。笑えない話である。なぜこのようなことになってしまったのか。
もともとこのシステムは日本で開発されたものではなく、日本国内における
ミニプリズムの使用(できるだけ測点に近づけた位置にミラーをセットする)
ではなく、現況測量を想定した開発がされたようである。そのシステムでは
ミニプリズムではなく特殊な形状の360°プリズムの使用が基本とされている。
360°プリズムは通常のミニプリズムを3個組み合わせたようなもので、
どの方向からも視準を可能とした非常にユニークな製品である。その特殊な
構造ゆえにポールを中心に上下にスライドさせることは不可能で、これまた
特殊なポールの先端に取り付けて(その形状は漫画アニメの魔法のスティック
のようである)使用する。
この360°プリズムであれば、機械はプリズムを常に捕捉しておくこと
ができるため、プリズムを移動しても機械は常にその方向を向いていられる
ので、前述のような大体の方向を向くことができないという問題は出てこな
いのである。
ただ、この360°プリズム、調査士にははっきり言って使えない。先にも
述べたようにこのプリズムはポールの先端に取り付けて使用するため、
なるべく測点に近い低位置にプリズムを据えることができない。ましてや壁や
ブロック塀などの側面の測距にはかなり無理がある。このプリズムは意外と
大きく、かさばることも否めない。おまけに高価(ミニプリズムの5〜6倍)と
なれば、その利点を見いだすことが難しい。
いずれにせよ、ミニプリズムを使用して機械にその方向を向かせるには、
なんらかの改良が必要である。せっかくリモコンでやり取りをしているのだ
から、この電波を利用してミラーの方向(正確にはリモコンのコントローラー
の方向)を向かせることができそうな気がするのだが、いかがなものであろ
うか。
つい最近、測量中に起こった問題がある。ミラーでないものを自動視準で測って
しまったのだ。この時のモードはノンプリズムではなく、通常の光波モードであった
のだが、なんと車のテールライトの赤い部分を測距していたのである。機械点を入れ
替えたときの距離が全く違っていたので分かったのだが、なんとも困った問題である。
試しに意識的にいろいろな車のテールライトを測れるかどうかやってみたが、実験
した限りでは他の車のテールライトを測ることはできなかった。たまたま起こったこと
ではあろうが、車が駐車されている現場ではかなり注意を要することになりそうだ。
それから、これは機械内部の仕様上の問題なのだが、複数の現場データを記録
できることが災いして、観測記録をどこに保存するのかが分かりにくくなってしまって
いる。観測前に記録先を指定しなくても、前回の内容をそのまま継続するので、現場
が変わったときに間違って違う現場ファイルに記録してしまうことがよくある。
メモリーカード内部に記録する形式だけでも APA、SIM、GSI と3種類を使い
分けることになっていて、また、既存データと新規観測データを別々のファイルに保存
できるようにもしてあるため、その設定をしっかり把握していないと、一体観測データが
どこにあるのか迷ってしまうことになるのである。関係ないと思って消したファイルの
中に大事なデータが入っていた、ということがなかった訳ではない。このあたりは
インターフェイスの改善が望まれるところである。